COMMEDIA DELL'ARTE
2011/05/02
仮面を使用する即興演劇の一形態。16世紀中頃にイタリア北部で生まれ、主に16世紀頃から18世紀頃にかけてヨーロッパで流行し、
現在もなお各地で上演され続けています。
コンメディア・デッラルテの起源は、一説では古代ローマの「アテルラナ」ではないかと言われています。
アテルラナは、コンメディア・デッラルテのように、ストックキャラクターを用い即興演技によって行われる風刺喜劇でした。
教会が演劇を抑圧していた500年ほどの期間に、アテルラナは他の様々な演劇のスタイルと共に歴史の表舞台から消えてしまう。
その間、旅回り芸人のスタイルとして残り、民衆のなかで上演されていくうちにゆっくりと洗練されていき、
ルネサンス以降にコンメディア・デッラルテとして世に現れたとも考えられます。
コンメディア・デッラルテでは、俳優達が類型的なキャラクターをユーモラスに演じます。
そして、類型的な状況設定をベースに即興的に物語を展開していきます。初期のコンメディア・デッラルテの一座は旅回りをし、
屋外に設置した簡易舞台などで上演しました。上演内容には、時事問題や醜聞などの「話題の出来事」や、
上演場所の地域色が積極的に取り入れられました。
コンメディア・デッラルテは観客を楽しませるために様々な手段を使いました。演技は誇張され、やがて独特の笑いのテクニックも
編み出されていきました。時にはパントマイムやジャグリング、アクロバットなどの身体表現も交えて演じられました。
スラップスティックのような小道具も、観客を笑わせるために用いられました。女性が演劇をすることがあり得なかった時代に、
女優を舞台上に登場させたことも特筆に値します。コンメディア・デッラルテは、発祥の地のイタリアのみならず、
ヨーロッパ各地で幅広い層に受け入れられました。オペラ・ブッファの諸作品やレオンカヴァッロ『パリアッチ』、
リヒャルト・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』、プッチーニ『トゥーランドット』等、シナリオや劇構成に
コンメディア・デッラルテの要素を取り入れたオペラ作品も数多くあります。現代においても、コンメディア・デッラルテの手法は
継承され続けています。また、コンメディア・デッラルテの方法論を研究し、俳優の訓練法や上演に活かそうとする現代劇の
実演家・実演団体も存在しています。
コンメディア・デッラルテの登場人物は、それぞれ特有の名前を持ち、性格・服装・仮面・演技スタイルなどに類型的な特徴を備えています。
こういったキャラクター群は、ストック・キャラクターと呼ばれます。ストック・キャラクターから選んだ幾つかの登場人物を
俳優達が演じ、不倫、嫉妬、老いの悩みや滑稽さ、恋愛などを題材とする類型的なシチュエーションでの物語を、即興的に展開していきます。
アルレッキーノ
軽業師、道化師。ペテン師だが、悪逆非道ではないという性格づけをされています。フランスではアルルカン、
イギリスではハーレクインとも呼ばれています。他の登場人物を打ち据えるためのバトンを持っています。
猫の面を被り、赤・緑・青のまだら模様の衣装を着ています。この模様は、デザインの古いモチーフの一つとして今も残っており、
道化の衣装の起源とされています。
イル・カピターノ
語義は「隊長」。かつての戦士。戦さでの手柄を自慢しており、人々の尊敬も集めていますが、その手柄は別の者が立てたもので、
実は臆病者という設定。衣装としては軍服を着ることが多いようです。パンタローネがカピターノの娘と結婚したがっている、
という状況が描かれることがあります。
イル・ドットーレ
初老の男。博学で饒舌ですが、その発言はほとんど意味を成しません。異性に対して容赦のない冗談を無数に飛ばします。
しばしばパンタローネの友人として登場します。
インナモラーティ
恋をする若者達。恋の成就に困難が立ち塞がりますが、最後には結ばれる筋書きで演じられます。
男をインナモラート、女をインナモラータと言います。マスクは被らず、脚本の指定がない限りは、最新のファッションを着用します。
歌や楽器演奏や詩の暗唱を求められることがしばしばあるため、演者はそれらにある程度精通しておく必要があります。
カッサンドロ
老人をあらわす仮面。パンタローネと同様の特性を持ちます。
コロンビーナ
インナモラータに仕える女の召使い。アルレッキーノの恋人。肉体的魅力で周囲を惹き付けます。
無学だが生まれながらの知恵を持っています。ぼろぼろでつぎはぎだらけの服を着ています。アルレッキーナと呼ばれることもあり、
その際はアルレッキーノと同じようにまだらの道化服を着用します。通常は、仮面を使用しません。
小道具としてタンバリンを持っていることがあり、パンタローネがしつこく言い寄ってくるのをかわす目的で使用することもあります。
女性が演じる役。
ザンニ
初期のコンメディア・デッラルテに登場する、召使いキャラクターの原型。年寄りで、白いだぶだぶのスモックとパンツを着用しています。
後に、役割が細分化し、キャラクターの性質によって、アルレッキーノ、ブリゲッラ、プルチネッラ、ピエロなどに分かれていきました。
前述の古代ローマの「アテルラナ」にも、ザンニに類似するキャラクターが登場します。
ジョッピーノ
3つの甲状腺腫を持つ、ベルガモ地方の仮面。
スカピーノ
楽器を持ち、Molièreで有名になりました。
ステンテレッロ
7世紀の終わりから存在するトスカーナの財産を多数所持した男。フィレンツェの仮面。
タルタグリア
公証人の老人。半ば盲目でどもり者。
バランゾーネ
医者。serioso及びpresuntuosoの登場人物。
パリアッチ(オ)
現在の「クラウン」の祖。
パンタローネ
金持ちで、欲深で、色欲旺盛な老商人。男らしさと精力の象徴として大きな股袋を股間に付けています。
役柄として、インナモラータの親とされたり、イル・カピターノやイル・ドットーレの友人や商売仲間とされたりすることがあります。
パンタローネによる商売の計画が召使いザンニによって妨害されるのがお決まりのパターン。
ブリゲッラ
守銭奴の小悪党。アルレッキーノの相棒。衣装としては、ぶかぶかの白いスモックを着用します。
バタッチオと呼ばれるスラップスティックを携帯することがあります。緑色の、並はずれた性欲と金銭欲を強調する半マスクを被る。
モリエールの戯曲「スカパンの悪だくみ」に出てくるスカパンの原型。
プルチネッラ
猫背のだまされやすい男。鷲鼻の黒いマスクを被り、白い外套を着ている姿で現れることが多いです。
イギリスではパンチと呼ばれ、19世紀頃には人形劇の「パンチ・アンド・ジュディ」ショーへと変化し人気を博しました。
「パンチ・アンド・ジュディ」は、後にハリソン・バートウィッスルとマイケル・フィニスィーによってオペラにもなるなど、
様々な芸術分野で題材として取り上げられています。フランスにおけるピエロの起源を、このプルチネッラとする説もあります。
ペドロリーノ
現在ではピエロとして知られるキャラクター。白いマスクを被った夢想家で、繊細な性格。召使い役で現れ、
物語を引っかき回したり、インナモラーティの恋の仲立ちをしたりします。
メッツェッティーノ
利口なザンニかimbroglione。
ラ・ルッフィアーナ
母親かうわさ好きな都会の女性で、恋人たちに関わりを持つ。魔女の役割を持つこともあります。